通っているジムでたまに会う、ミッキー・カーチス似のおじさま(以下:ミッキー)がいるんだけど、登山のために毎日足腰鍛えていて、腹筋もバッキバキで現役時代の中田英寿みたいなすごい身体してる。特にふくらはぎの筋肉量が半端ない。
10年以上前からジムで挨拶する程度の仲だったが、インターバル中にたまたま一緒になって、初めてゆっくり話をした。
同じジムにいても僕はベンチプレスしかしないし、ミッキーはいつもトレッドミルの上にいるし、よく会うのに登山のために鍛えていることと酒好きなこと以外なにも知らなかった。
年齢だってせいぜい60代前半くらいと思ってたら、77歳と聴いて驚いた。
10代のころから山登りを始めて、もう60年も続けているという。とっくに趣味のレベルを超越している。
そんなこんなで、ミッキーにいくつか質問をぶつけてみた。
「それだけの肉体維持するって、ミッキーふだん何食べてるんすか?」
「なんでも食べるよ!甘いものも大好きだし、なんでも食べる!」
「お酒も毎日?」
「毎日酒ばっかり飲んでるよ!ガハハ。」
そしてもうひとつ、どうしても訊きたいことがあった。
どうして山に登るのか。何が魅力で何十年も登山を続けているのか。
ミッキー、なんて言ったと思います?
「そこに山があるから」とか、「頂上で朝日見ながら飲むコーヒーが最高なんだよ」とか、「実は本名が山田昇なんだよねペロッ」とか、当然そんな言葉が返ってくると思っていた。
ミッキーのアンサーはこうだった。
「うーん…よく訊かれるんだけど、わかんないんだよね。
頂上に登って特別嬉しいとも思わないし、山に咲いている花をみつけて感動することもない。
なんにもないんだよねそういうの。ガハハハ!」
「…!!じゃあ、登ることそのものが好きとか?」
「そうなんだろうね〜。登るのは好きだね。楽しい。山は好き!」
ああ僕、嬉しくてですね。この感覚。ジャイアンなら、「おお〜心の友よ!」と抱きついてたところ。
ミッキーにとっては、頂上を目指すことよりも、花を見ることよりも、純粋に「山に登る」という行為そのものに愛があるのだ。
もっと言えば、山を登るその一歩一歩が、山を登るための一日一日が、ミッキーにとっての「頂上」なのだろう。
うまいこと言った気がします。
終わり