絆とは?家族とは?温もりとは?映画『万引き家族』の感想

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万引き家族

話題の映画『万引き家族』を観てきた。

カンヌ国際映画祭で最高賞(パルム・ドール)を受賞した、是枝裕和監督の最新作だ。

親の死亡届を出さずに、年金を不正受給し生活していた実際の事件をもとに、10年近くの構想の末に生みだされた作品という。

「家族構成」は、リリー・フランキー、樹木希林、安藤サクラ、松岡茉優。子役に城桧吏(じょうかいり)、佐々木みゆの六人。

さらに、柄本明や緒形直人、池松壮亮、池脇千鶴といった豪華な俳優陣が脇を固める。

『万引き家族』を観た感想

映画は、父である柴田治(リリー・フランキー)が、息子の祥太(城桧吏)と見事な連携プレーで万引するシーンから始まる。

すでに暗くなった家路につく途中、二人は寒空の下、母親から閉め出されて座っている女の子(佐々木みゆ)を発見する。治は放っておけず、総菜屋で買ったばかりのコロッケを差し出し、「家族」が待つ家に娘として招き入れたのであった。

物語は、死、貧困、性、孤立、虐待、別れ、生きる強さ、追い詰められたときの人間の弱さと狡さ、虐待や非正規労働など根底にある社会問題をストレートに映し出していた。

祖母の年金をあてに生活し、盗みを生業とする家族。その事実だけを見たら、無責任でとんでもない悪党に見え、「自己責任論」を押し付けたくもなるだろう。

ただ、人は胃袋が空っぽだと、他者のことをおもんぱかる余裕などなくなるのだ。自分が「マトモ」だと思っているその思考は、満遍なく栄養が行き渡っている身体の上に成り立っていることを忘れてはならない。

ふれあうこと、つながること。

父の言いなりだった優しい「息子」が万引きに疑問を抱き成長していく一方で、相変わらず成長しない自堕落な父親。しかしどこか憎めず、その目は不安と寂しさを物語る。

印象的だったのは、家族内で暴力的な場面が一切出てこないことだ。嘘も犯罪もズルさもある。なのに、一人ひとりが優しく、愛情深く、人間臭い温もりがこれでもかと伝わってくるのだ。

映画の中では、抱きしめるシーン、触れ合うシーンがとても多かった。親と子、男と女、孫と祖母が、言葉よりも肌と肌を通して独りじゃないことを確かめ合う。

触れ合うこと、つながること。現代人が忘れている大切な部分を、この作品は思い出させてくれる。

現代社会の縮図

この映画のあらゆる演技が自然体で、ドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥り、気がつけば胸に込み上げてくるものを必死で抑えていた。

感情を大いに揺さぶるこの映画も、よくありがちな「ここで泣け」「ここは笑うところ」といった、感動の押し付けが一切感じられない。

ラストシーンでさえ個人的には「え、終わり?」という印象であった。これだけ作り込まれた作品である。いくらでも「泣かす」ことはできたはずだ。

しかし映画終了後、僕を含め映画館にいたほとんどは立ち上がることなく、声を発することもなくエンドロールをそのまま眺め続けていた。それぞれがこの作品からの問いに対し、自分なりの答えを構築している時間のようにも感じた。

この物語は “to be continued” であり、今まさに現実社会で継続中のワンシーンの縮図なのだ。

『万引き家族』という題名にはインパクトがあり、誤解を招くという懸念も一部であるようだが、その誤解を解くためにもぜひ映画館に足を運んで欲しい。あなたはこの作品から、何を受け取るだろうか。

映画『万引き家族』公式サイト

リリー・フランキー vs ビッグイシュー

万引き家族・ビッグイシュー

ホームレスの仕事をつくり自立を応援する雑誌、『ビッグイシュー』 VOL.336では、父親役を演じたリリー・フランキー氏のスペシャルインタビューが掲載されている。ぜひ350円でゲットしてリード!してほしい。

“正解の家族”ってないんだろうと思うんです。煩わしさの中には、とても意味ある温かさがあるから

リリー・フランキー

関連記事:ホームレス支援の雑誌『ビッグイシュー』をゲットせよ!

是枝裕和監督の書籍

僕は今のところ未読ですが、是枝監督は本も出されているんですね。

万引き家族【映画小説化作品】
宝島社 (2018/5/28)

映画を撮りながら考えたこと
ミシマ社 (2016/6/8)




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